給与・年末調整

【令和9年分】扶養控除等申告書の変更点:62万円の要件と、配る前に従業員へ伝える一言

結論

令和9年分の扶養控除等申告書は、欄の名前は令和8年分と同じで、裏面の 扶養親族などの所得の要件が58万円以下から62万円以下 に変わった様式です。

「源泉控除対象親族」の欄も、その中の「特定扶養親族・特定親族」のチェック欄もそのままで、変わったのは裏面に書かれた所得と給与収入の額です。担当者がやることは3つです。

  1. 11月、今年の年末調整の書類と一緒に配る。「どの年分の紙か」と「家族の要件が上がったこと」をひと言添える
  2. 回収したら、下の「回収したときに見る所」で確かめる(年分の取り違え、収入と所得の混同、16歳未満の子の書き漏れ)
  3. 2027年の最初の給与の前日までに回収し、扶養の人数を給与ソフトに入れる

この記事では額を計算しません。国税庁の様式の裏面と、国税庁の資料に書いてある額を、そのまま写して並べています。判断に迷うものは、顧問の税理士に確かめます。

この記事が役に立つ人

  • 従業員10人前後の会社で、年末調整と翌年分の申告書の回収を一人で担当している人
  • 令和9年分の申告書を配る前に、何が変わったかだけを押さえたい人

欄ごとの書き方(記入例)は、国税庁の記載例を見るのがいちばん確かです。この記事は、配る側・回収する側の段取りに絞っています。

様式の裏面の額:令和8年分と令和9年分

どちらも国税庁の様式の裏面「記載についてのご注意」から写しています。令和8年分の様式は改正の前に作られたもので、裏面は改正前の額のままです(国税庁の Q&A の Q2-1 にも、その旨の注意があります)。

区分令和8年分の様式の裏面令和9年分の様式の裏面
扶養親族所得の見積額 58万円以下所得の見積額 62万円以下
同一生計配偶者所得 58万円以下(給与だけなら収入123万円以下)所得 62万円以下(給与だけなら収入 136万円以下)
特定親族(19歳以上23歳未満)所得 58万円超123万円以下(給与だけなら収入123万円超188万円以下)所得 62万円超123万円以下(給与だけなら収入 136万円超197万円以下)
源泉控除対象親族控除対象扶養親族か、特定親族のうち所得100万円以下(給与だけなら収入165万円以下)控除対象扶養親族か、特定親族のうち所得100万円以下(給与だけなら収入 174万円以下)
源泉控除対象配偶者(本人の所得900万円以下)所得95万円以下(給与だけなら収入160万円以下)所得95万円以下(給与だけなら収入 169万円以下)
勤労学生(従業員本人)所得85万円以下(給与だけなら収入150万円以下)所得 89万円以下(給与だけなら収入 163万円以下)

出典:令和9年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(国税庁・PDF)・令和8年分の同じ様式(国税庁・PDF)

様式の裏面の「扶養親族」の行には、給与収入の額は書かれていません。給与だけの扶養親族の目安は、国税庁の令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし(PDF)2ページの「⑶ 扶養親族等の所得要件の改正」の表に、令和8・9年分は給与だけなら収入136万円以下と書かれています。

表から読み取れることは3つです。

  • 「所得」の線が上がったのは、扶養親族・同一生計配偶者・特定親族の下の線・勤労学生。 源泉控除対象親族(100万円)と源泉控除対象配偶者(95万円)の所得の線は変わっていません
  • 「給与だけなら収入◯円」は、ほぼすべての行で上がっています。 給与所得控除の最低保障額が、令和8・9年分は65万円から74万円に上がったためです(令和10年分以後は69万円。国税庁の改正のあらましの⑵、Q&A の Q2-3・Q3-1)。所得の線も上がった行(同一生計配偶者・特定親族の下の線・勤労学生)は、その分も加わっています。この表の給与収入の額は令和8・9年分のもので、令和10年分の様式では変わることがあります
  • 特定親族の上の線(123万円)と、源泉控除対象親族の欄に書ける線(100万円)は別物です。 解説記事によって「100万円以下」「123万円以下」と書き方が分かれていますが、様式の上では、特定親族は所得123万円以下まで、そのうち所得100万円以下の人だけを源泉控除対象親族の欄に書きます

所得が100万円を超える特定親族は、この申告書の源泉控除対象親族の欄には書きません。年末調整で特定親族特別控除を受けるときは、別の「特定親族特別控除申告書」を出します(令和9年分の様式の裏面「1 申告についてのご注意」の⑸)。

11月〜12月は、2つの年分の申告書が同時に動く

改正は令和8年12月1日の施行です。国税庁は、令和8年11月までの給与の源泉徴収には変更がなく、12月の年末調整から改正後の要件で計算するとしています(令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について)。そのため、11月〜12月は次の2つが重なります。

申告書何に使うか担当者が気をつけること
令和8年分の扶養控除等(異動)申告書2026年12月の年末調整改正で新しく対象になる家族がいれば、書き足して出してもらう。その家族の「異動月日及び事由」の欄には「令和8年12月1日 改正」などと書く(Q&A の Q2-1)。裏面は改正前の額のまま
令和9年分の扶養控除等申告書2027年の毎月の源泉徴収裏面の額は改正後。2027年の最初の給与の支払を受ける日の前日までに出してもらう(様式の裏面「1 申告についてのご注意」の⑴)

改正を反映した年末調整の書類を、12月1日より前に出してもらっても差し支えないとされています(Q&A の Q1-2)。11月に両方を一度に配って構いません。

令和8年分の年末調整での扶養の判定は、年末調整の扶養の判定で迷う所 にまとめています。

担当者の段取り(10月〜1月)

令和9年分の申告書に関わる所だけを抜き出しています。

時期誰に何を
10月自分国税庁の「各種申告書・記載例」に令和9年分の様式と記載例が出ていることを確かめる。年末調整や給与のソフトを使っていれば、令和9年分の申告書を配れる状態になったか確かめる
11月従業員全員今年の年末調整の書類と一緒に、令和9年分の申告書を配る。下の「配る一言」を添える
11月〜12月従業員回収する。下の「回収したときに見る所」で確かめ、足りない所は本人に戻す
12月自分令和8年分の年末調整。令和9年分の申告書は、翌年の扶養の人数の元になるので別に保管する
1月の最初の給与の前自分回収していない人がいないか確かめる。扶養の人数を給与ソフトに入れる。令和9年分の源泉徴収税額表で計算されるか確かめる

1月の給与の前に確かめることは、2027年1月の給与計算の前に確かめること にまとめています。

従業員に配る一言(そのまま使える見本)

チャットやメールにそのまま貼れる形にしています。会社名・期限は書き換えてください。

【来年(2027年・令和9年分)の扶養控除等申告書のお願い】

年末調整の書類と一緒に、来年分の「扶養控除等申告書」をお配りします。
紙に書かれた年分が「令和9年分」であることを確かめてから書いてください。

今年の税制改正で、扶養に入れられるご家族の所得の要件が
「58万円以下」から「62万円以下」に上がりました。
(給与だけのご家族なら、収入136万円以下が目安です。国税庁の改正のあらましより)
今年まで扶養に入らなかったご家族も、来年の見込みで入ることがあります。

書くときに、次の4つに気をつけてください。

1. 「所得の見積額」の欄は、収入ではなく所得の額です
   (給与なら、収入から給与所得控除を引いた額)
2. 19歳以上23歳未満のご家族を「源泉控除対象親族」の欄に書くときは、
   「特定扶養親族」か「特定親族」にチェックを付けます。
   所得が100万円(給与だけなら収入174万円)を超えるご家族は、
   この欄には書きません(所得123万円(給与だけなら収入197万円)
   以下なら、年末調整のときに別の申告書で出します)
3. 16歳未満のお子さんも、「住民税に関する事項」の欄に書いてください
4. 今年出した申告書から何も変わらない方は、簡易な書き方ができます。
   迷ったら、いつもどおり全部書いてください

ご家族が年金を受け取っている場合に日本年金機構から届く
「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」は、別の書類です。

◯月◯日までに提出してください。

回収したときに見る所

年末調整で私がつまずいたのも、扶養の処理でした。回収した申告書は、上から順に見ます。

  1. 年分が「令和9年分」か。 11月は令和8年分の異動の申告書と混ざりやすい。令和8年分の紙に来年の見込みが書かれていたら、書き直してもらう
  2. 所得の見積額が「令和9年中」の見込みか。 今年の額を写しただけになっていないか
  3. 収入と所得を取り違えていないか。 様式の裏面「2 記載についてのご注意」の⑹では、所得の見積額は収入から必要経費など(給与なら給与所得控除)を引いた額とされている。パートやアルバイトの年収を、そのまま書いていないかを見る
  4. 源泉控除対象親族の欄に書かれた19歳以上23歳未満の人に、チェックが付いているか。 「特定扶養親族」か「特定親族」のどちらか(裏面「2 記載についてのご注意」の⑸)。あわせて、給与収入174万円(所得100万円)を超える人がこの欄に書かれていないかを見る。この欄に書ける特定親族は所得100万円以下の人だけ(裏面「4 扶養親族等の範囲」の⑨)。超える人を書くと、毎月の源泉徴収で使う扶養の人数が多くなる
  5. 16歳未満の子が、「住民税に関する事項」の欄に書かれているか。 所得税の扶養控除の対象ではないが、住民税の計算に使う
  6. 夫婦で同じ家族を重ねていないか。 夫婦の双方が、お互いを源泉控除対象配偶者として控除を受けることはできないとされている(裏面「4 扶養親族等の範囲」の③の注)。子などを夫婦のどちらの申告書に書くかは、会社からは見えないので本人に確かめる
  7. 国外に住む家族がいないか。 「非居住者である親族」の欄に印があれば、別に書類が要る。書類の中身は 国外に住む家族を扶養に入れるときの書類 を見る
  8. 簡易な申告書で出してきた人は、本当に変わりがないか。 簡易な申告書は、令和8年に出した申告書の内容から異動がない場合に使えるもの(裏面の「1 申告についてのご注意」の⑵)。書く内容が令和8年分から変わる人は、簡易な申告書は使えない。迷う人には、いつもどおり全部書いてもらう

外国人の従業員の年末調整全体は、外国人の従業員の年末調整 にまとめています。

1月の源泉徴収税額表

改正後の源泉徴収税額表は、令和9年(2027年)1月1日以後に支払う給与から使います(Q&A の Q4-1)。給与ソフトの更新の確かめ方は 2027年1月の給与計算の前に確かめること にまとめているので、ここでは繰り返しません。

国税庁のページ(確かめる先)

公的年金の受給者向けの申告書は、日本年金機構のページ で案内されています。

まとめ

  • 令和9年分の様式は、扶養親族などの所得の要件が 62万円以下 になった額で裏面が書かれている
  • 11月〜12月は、令和8年分の異動の申告書と令和9年分の申告書が同時に動く。年分を取り違えない
  • 回収したら、所得の見積額(収入ではない)・源泉控除対象親族の欄の19〜22歳のチェックと174万円の線・16歳未満の住民税の欄を見る
  • 2027年の最初の給与の前日までに回収し、扶養の人数を給与ソフトに入れる

10月〜1月の年末調整全体の順番は 一人で担当する年末調整2026:10月から1月までの順番 に、申告書の配布と回収をソフトで回すときの流れは マネーフォワード クラウドで年末調整をする流れ にまとめています。