給与・年末調整

【2026年】外国人の従業員が退職・帰国するときの年末調整:出国の日までにやること

私は年末調整をマネーフォワード クラウドで行っていて、つまずいたのは外国人の従業員と扶養の処理でした。

結論

外国人の従業員が帰国するとき、会社が年末調整をするかどうかは 退職の日と出国の日の関係 で決まり、最後の給与の支払日が出国より後になるなら、年末調整の前に顧問税理士に確かめます。

退職と出国の関係会社の年末調整担当者がすること
① 在職のまま、1年以上の予定で国外に移り、非居住者になる出国の日までに行う(国税庁の説明どおり)最後の給与で年末調整。源泉徴収票の摘要欄に出国の月日
② 退職の日に、またはその直後に出国する①と同じ扱いにする実務の記事が多い自社の場合を一度、顧問税理士に確かめてから①で進める
③ 退職して、しばらく日本にいてから出国する原則として行わない源泉徴収票を退職の日から1か月以内に渡す。精算は本人の確定申告

出国後に払う給与は、源泉徴収の扱いが変わります(「最後の給与を出国のあとに払う場合」で説明します)。

外国人の従業員が帰国するとき、会社が年末調整をするかの分かれ道
外国人の従業員が帰国するとき、会社が年末調整をするかの分かれ道

この記事が役に立つ人

  • 従業員10人前後の会社で、給与と年末調整を一人で担当している人
  • 外国人の従業員から「退職して国に帰る」と言われ、何をいつまでにやるかを整理したい人

外国人の従業員の年末調整の全体(居住者・非永住者の区分、国外に住む家族の扶養など)は 外国人の従業員の年末調整 にまとめています。この記事は、その中の「年の途中で帰国する場合」だけを詳しく書きます。

最初に確かめる3つの日付

帰国の話が出たら、まず本人と次の3つをそろえます。どの手続きも、この3つで決まります。

日付何に効くか
退職の日①〜③のどれに当たるか。社会保険・雇用保険の資格喪失の期限
出国の日年末調整の期限(①②)。控除できる保険料の範囲。扶養の判定の時点
最後の給与の支払日出国より前か後か。後なら源泉徴収の扱いが変わる

末締め・翌月払いの会社では、退職月の給与の支払日が出国より後になりがちです。支払日を出国の前に動かせるかを、この時点で社内で決めておくと後が楽です。

出国の日までに年末調整をする場合(①と②)

国税庁の説明

国税庁は、1年以上の予定で海外に転勤して非居住者になる人について、出国する日までに年末調整をしなければならないとしています(No.2517 海外に転勤する人の年末調整と転勤後の源泉徴収)。範囲は次のとおりです。

項目範囲・判定の時点
社会保険料・生命保険料などの保険料控除出国する日(居住者だった期間)までに支払ったものだけ
扶養・配偶者控除の対象か(生計を一にしていたか、親族か)出国の時の現況で判定
家族の合計所得の判定出国の時の現況で見積もった、その年1月1日〜12月31日の合計所得で判定
基礎控除出国の時に、その年の合計所得が2,500万円以下なら控除できる

②の「退職と同時に帰国」について

国税庁の通達で年の途中に年末調整をする場合として書かれているのは「海外支店等に転勤したことにより非居住者となった場合」です(所得税基本通達190-1)。退職して帰国する場合を名指ししてはいません。

上位の記事を見ると、会計事務所・社労士法人・給与ソフトのFAQの多くは、帰国のための退職も出国までに年末調整をする扱いで書いています。一方で「退職なら年末調整は不要、本人が確定申告」と答えている専門家の回答もあり、ネット上では書き方が割れています。退職日と出国日が数日でも離れているなら、③に当たらないかを顧問税理士に一度確かめてから進めるのが安全です。

本人に出してもらう書類

国税庁の No.1920 海外勤務と所得税額の精算 では、出国のときの年末調整に次の3つを挙げています。

  1. 給与所得者の保険料控除申告書(出国の日までに支払った保険料で書く)
  2. 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(今年の内容に変わりがないかを確かめ、変わっていれば異動の申告)
  3. 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書

国外に住む家族を扶養に入れている場合は、親族関係書類・送金関係書類も要ります。種類と集め方は 国外に住む家族を扶養に入れるときの書類 にまとめています。

源泉徴収票の書き方

退職して、しばらく日本にいてから出国する場合(③)

退職の時点では、まだ日本の居住者です。この場合は「年の途中で退職した人」として扱います。

年の途中で退職した人に会社が年末調整をするのは、次の場合だけです(所得税基本通達190-1、No.2665 年末調整の対象となる人)。

  • 死亡によって退職した
  • 著しい心身の障害のため退職し、その年のうちに再就職できないと見込まれ、退職後その年に給与を受け取る予定もない
  • 12月に支給される給与を受け取ったあとに退職した
  • パートなどで、その年に受け取る給与の総額が一定額以下(金額は No.2665 で確かめる。退職したあと、その年に別の勤務先から給与を受け取る見込みの人は除く)

これに当たらなければ、会社は年末調整をしません。担当者がすることは次のとおりです。

  1. 源泉徴収票を、退職の日以後1か月以内に渡す(住所の欄は退職の時の住所。手引の「中途退職者は、退職時」)
  2. 本人に「年末調整はしていないので、所得税の精算は本人の確定申告になる」と伝える

国税庁は、確定申告が必要な人が納税管理人を届けずに出国するときは、出国の時までに確定申告をしなければならないとしています(No.1920)。出国後に申告や還付の受け取りをするなら、納税管理人を決めて税務署に届け出ます(No.1923 海外勤務と納税管理人の選任又は解任)。どちらにするかは本人が決めることで、会社は案内するところまでです。

最後の給与を出国のあとに払う場合

国税庁の No.2517 では、非居住者になった使用人に出国後に払う給与について、次のように説明しています。

  • 給与の計算期間の途中で非居住者になり、計算期間が1か月以下なら、日本での勤務期間が含まれていても源泉徴収しなくてよい
  • ただし、給与の全額が日本での勤務に対応する場合は、20.42%の税率で源泉徴収が必要

退職して帰国した人の最後の給与は、日本で働いた分です。この扱いに当たるか、年末調整にどう入れるかは、支払いの前に顧問税理士に確かめます。担当者の側でできるのは、最初に3つの日付をそろえた時点で、支払日を出国の前にできないかを決めておくことです。

住民税:残りの払い方を本人と決める

総務省は、外国人の住民税について次のように案内しています(外国人の方の個人住民税について)。

  • 住民税は、1月1日時点で日本に住所がある人にかかる。1月2日以降に出国しても同じ
  • 退職するときは、本人の申出があれば、最後の給与や退職金から残りを一括で徴収できる
  • 出国までに払えない場合は、出国の前に、日本に住む人の中から納税管理人を決めて、住んでいる市区町村に届け出る

申出がなくても一括徴収になる時期は、地方税法で決まっています。1月1日から4月30日までに退職する場合は、5月31日までに払う給与や退職金が残りの税額より多ければ、申出がなくても、最後の給与や退職金から残りを一括で徴収します(地方税法 第321条の5第2項)。

担当者の作業としては、特別徴収をやめる届出(給与所得者異動届出書)を、特別徴収をしている市区町村(その年の1月1日に住んでいた市区町村。特別徴収税額の決定通知書を送ってきた所)へ出します。今住んでいる市区町村とは限りません。年の途中で引っ越した従業員は、出す先を間違えやすいので気をつけます。様式と期限は、その市区町村の案内で確かめます。

周りの手続き(一度に確かめておくもの)

年末調整と同じ時期に、次の手続きが重なります。

手続き誰がどこへ期限
健康保険・厚生年金保険の資格喪失届会社事務センター・年金事務所事実発生から5日以内(日本年金機構)
雇用保険の資格喪失届(外国人雇用状況の届出を兼ねる)会社ハローワーク離職の翌日から10日以内(厚生労働省)
外国人雇用状況届出書(様式第3号)※雇用保険に入っていない人会社ハローワーク離職の翌月末日まで(同上)
住民税の給与所得者異動届出書会社特別徴収をしている市区町村(その年の1月1日の住所の市区町村)市区町村の案内のとおり
源泉徴収票会社→本人本人退職の日以後1か月以内
退職者の給与支払報告書会社退職の時の住所の市区町村翌年1月末ごろ(毎年の手引で日付を確かめる。支払額30万円以下は省略できる)
住民税の納税管理人本人住んでいる市区町村出国の前
所得税の納税管理人本人税務署出国後に申告・還付を受ける場合
厚生年金・国民年金の脱退一時金本人日本年金機構日本に住所がなくなった日から2年以内(日本年金機構)

脱退一時金は、日本国籍がなく、加入期間が6か月以上あるなどの要件を満たす人が、出国したあとに本人が請求するものです。会社は案内だけでかまいません。請求書は外国語と日本語が並んだ様式があり、市区町村に転出届を出してから出国していれば、日本に住所がないことを示す書類は原則として要りません(脱退一時金を請求する方の手続き)。

担当者の段取り表

いつ担当者がすること本人に頼むこと
帰国の話が出た日3つの日付をそろえる。①〜③のどれかを決める。②③や、支払日が出国後になる場合は顧問税理士に連絡退職の日・出国の日を決めて知らせてもらう
出国の2〜3週間前年末調整の書類を渡す。住民税の払い方を決める保険料の控除証明書、国外の家族の書類、申告書3種を出してもらう。住民税を一括にするか決めてもらう
最後の給与①②なら年末調整。住民税を一括で徴収するならここで源泉徴収票の受け取り先(出国後に郵送するならその住所)を聞いておく
退職の日の翌日から資格喪失届(5日以内)、雇用保険の資格喪失届(10日以内)、住民税の異動届転出届、納税管理人の届出(必要なら)
退職から1か月以内源泉徴収票を渡す—
翌年1月退職者の給与支払報告書を出す—

本人に渡す一言(コピーして使える)

やさしい日本語と英語の見本です。③の人には、4の代わりに最後の一文を使います。

帰国の前に、次のことをお願いします。

  1. 会社をやめる日と、日本を出る日が決まったら、すぐに教えてください。
  2. 今年の保険料の控除証明書(生命保険など)を出してください。国の家族を扶養に入れている人は、家族の書類も出してください。
  3. 住民税の残りは、最後の給与から引くか、自分で払うかを決めてください(1月〜4月にやめる人は、原則として最後の給与からまとめて引きます)。日本を出る前に払えない人は、日本に住む人を「納税管理人」にして、市区町村に届けてください。
  4. 日本を出る前に、会社で年末調整をします。源泉徴収票は最後の給与のあとに渡します。
  5. 市区町村で転出の手続きをしてから日本を出てください。年金の脱退一時金は、日本を出たあと2年以内に自分で請求できます。

(③の人)会社をやめたあとに日本を出るので、会社では年末調整をしません。所得税を精算したい人は、日本を出る前に確定申告をするか、納税管理人をとおして申告してください。

Before you leave Japan, please:

  1. Tell us your last working day and your departure date as soon as they are fixed.
  2. Give us this year's insurance premium certificates (life insurance, etc.). If you support family members living outside Japan, please also give us the documents for them.
  3. Decide how to pay the rest of your resident tax: we deduct it from your last salary, or you pay it yourself. (If you leave the company between January and April, as a rule we deduct the rest from your last salary.) If you cannot pay before you leave, appoint a person living in Japan as your tax representative (nozei kanrinin) and register at your city office.
  4. We will do your year-end tax adjustment before you leave Japan. We will give you your withholding tax slip (gensen choshu hyo) after your last salary.
  5. Complete the moving-out procedure (tenshutsu todoke) at your city office before you leave. You can claim the pension Lump-sum Withdrawal Payment yourself within 2 years after leaving Japan.

(If you leave the company before leaving Japan) The company will not do the year-end adjustment. To settle your income tax, file a tax return before you leave Japan, or through your tax representative.

つまずきやすい所

  • 帰国の予定を直前に知る — 書類をそろえる時間がなくなります。在留期間の終わりが近い従業員には、秋の年末調整の案内と一緒に、早めに予定を聞いておきます
  • ネットの記事の答えが割れている — 「帰国なら出国前に年末調整」と「退職なら年末調整は不要」の両方が出てきます。分かれ目は退職の日と出国の日の関係です(結論の表の①〜③)
  • 控除証明書の金額をそのまま使う — 保険会社の控除証明書には、その年の年間の見込み額が書かれていることがあります。出国のときの年末調整で控除できるのは、出国の日までに支払った分だけです
  • 最後の給与の支払日が出国後 — 末締め・翌月払いだと起きやすいです。3つの日付をそろえた時点で気づけば、支払日を前に動かす相談ができます
  • 国外に住む家族の書類がそろわない — 書類がない家族は扶養に入れられません。→ 国外に住む家族を扶養に入れるときの書類
  • 一人で判断しきれない — ②③の境目、出国後の給与、退職金がある場合は、顧問税理士に先に聞きます。何をどの専門家に聞くかは 一人バックオフィスの相談先 にまとめています

一次情報のリンク一覧

制度の最終的な判断は、税務署・市区町村・年金事務所の窓口と顧問の専門家が行います。この記事は、担当者が準備するための整理です。

まとめ

  • まず 退職の日・出国の日・最後の給与の支払日 をそろえる
  • 在職のまま1年以上の予定で国外に移るなら、出国の日までに年末調整。保険料は出国の日までに払った分、扶養は出国の時の現況で判定
  • 退職してしばらく日本にいるなら、会社は原則として年末調整をしない。源泉徴収票を1か月以内に渡し、精算は本人の確定申告
  • 住民税・資格喪失・外国人雇用状況の届出・脱退一時金の案内は、同じ時期にまとめて片づける

年末調整の全体の順番は 一人で担当する年末調整2026、ソフトで回す場合の流れは マネーフォワード クラウドで年末調整をする流れ にまとめています。