勤怠・労務

勤怠管理システムの導入手順:Excelの出勤簿から移す5段階と、古いファイルの保存(10人の会社・2026年版)

結論

Excelの出勤簿からは「ルールの書き出し → 打刻の方法 → 従業員と有給の登録 → 1回の締めだけ並べる → 切り替えと保存」の5段階で移れて、システムを選ぶのは打刻の方法を決めたあとで間に合います。

結論の中身

  • 手順は ①今のルールを書き出す ②打刻の方法を決める ③従業員と有給を登録する ④1回の締めだけ並べて動かす ⑤切り替えて、古いExcelを保存する の5段階です。システムを選ぶのは②のあとで間に合います
  • Excelで管理していること自体は違法ではありません。 問われるのは始業・終業の時刻をどう確かめているかで、原則はタイムカード・ICカード・パソコンの使用時間などの 客観的な記録 です。自己申告だけで集めているなら、移る理由になります
  • 移したあとも、古いExcelの出勤簿は消しません。 出勤簿やタイムカードの記録は労働基準法109条で保存の対象で、期間は5年(当分の間は3年)。数え始めは、その記録に関わる 給料の支払日 になる場合があります

この記事が役に立つ人

  • 出勤簿やタイムカードの集計をExcelでしていて、勤怠管理システムを初めて入れようとしている人
  • 従業員10人前後の会社で、勤怠・給与を一人で担当している人

すでに別の勤怠システムを使っていて、ほかのシステムへ乗り換える場合は 勤怠管理システムを乗り換えるタイミング の方が合っています。

Excelのままでよいか:移る時期の目安

Excelが問題になるのは「時刻の取り方」

会社には、従業員の労働日ごとの始業・終業の時刻を確かめて、記録する責任があります(ガイドラインの対象は、管理監督者など労働基準法41条の人と、みなし労働時間制が適用される人〔事業場外の仕事はみなしが適用される時間だけ〕を除く従業員です)。厚生労働省のガイドライン(平成29年1月20日)では、確かめ方の原則が次のように決められています(労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン)。

時刻の取り方ガイドラインでの扱い
会社(上司)が自分の目で見て確かめる原則的な方法
タイムカード・ICカード・パソコンの使用時間などの客観的な記録をもとに確かめる原則的な方法
本人が書いた時刻を集める(自己申告)やむを得ない場合だけ。本人と管理する人への十分な説明、パソコンの使用時間などと大きく離れていたら実態を調べて直す、申告できる時間に上限を設けない、などの措置が要る

労働安全衛生規則(52条の7の3)でも、労働時間の状況は「タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法」で把握し、記録を3年間保存することになっています。こちらは管理監督者(管理職)も含みます。

つまり、タイムカードの時刻をExcelに写して集計している なら、Excelは集計の道具にすぎません。従業員がExcelに自分で時刻を打ち込んでいるだけ なら、上の措置をとるか、客観的な記録が残る方法に変える必要があります。

人数だけでは決まらない

「何人になったらシステムにすべきか」に公的な基準はありません。人数より、次の表で当てはまる数を見る方が判断しやすくなります。

当てはまるか見る所
始業・終業を本人の自己申告だけで集めている上のガイドラインの措置をとれているか
月の締めで、回収・催促・直し・給与への転記に毎月まとまった時間がかかっている一度、締め1回分にかかった時間を測ってみる
直行直帰・シフト・深夜・休日出勤など、例外の計算が毎月あるExcelの式を毎月手で直していないか
有給の付与日・日数・取得日を、人ごとに一覧で出せない年次有給休暇管理簿(下で説明)を作れているか
Excelの式の中身を分かっているのが自分だけ自分が休んだ月に、ほかの人が締められるか

最後の行は、一人担当で起きやすい所です。自分しか分からない仕組みは、自分が休めない仕組みでもあります(→ 一人経理が休めないとき)。

移すデータ・移さないデータ・残すデータ

分け方中身どうするか
移す従業員情報(従業員番号・氏名・入社日・雇用形態)新しいシステムのCSVの見本に写して取り込む
移す有給休暇(付与日・付与日数・失効日・取得した日数)残日数だけでなく、付与日と失効日 も移す
移す所定労働時間・休憩・休日(会社のカレンダー)就業ルールとして設定する
移さないExcelの計算式・マクロ新しいシステムの設定で作り直す
移さない過去の打刻・日ごとの勤怠新しいシステムには入れない(下の「残す」へ)
残す過去の出勤簿・タイムカードの記録・残業の集計Excelのまま消さずに保存する
残す年次有給休暇管理簿Excelで作っていたなら、それも保存する

手順

① 今のルールを書き出す

勤怠管理システムの設定は、会社のルールをシステムに入れる作業です。Excelの式の中に埋まっているルールを、先に文字にします。

書き出すもの例
所定労働時間・休憩9:00〜18:00、休憩60分
締め日・給料の支払日末締め・翌月25日払い
休日土日祝、夏季・年末年始の休日
残業・深夜・休日出勤の数え方所定を超えた分、22時〜5時の分、法定休日の分を分けているか
時刻の端数の扱い1分単位か、丸めているか
有給休暇の付与入社日から数えるか、全員同じ日に付与するか
例外の働き方直行直帰・時短・シフト・パート
固定残業代の有無ある場合は何時間分か

書き出したら、就業規則と実際のやり方がずれていないか を並べて見ます。ずれていたら、システムに入れる前に社労士や社長とどちらに合わせるか決めます。端数を丸めている場合は、丸め方に厚生労働省の通達の決まりがあります(→ マネーフォワード クラウド勤怠と給与の連携手順 の「残業時間の端数処理」)。

私が一人でバックオフィスを回していて、先にやっておけばよかったと思うのは 業務フローのルール化 でした。勤怠のルールの書き出しは、その一部です(→ 業務フローのルール化)。

② 打刻の方法を決める

ガイドラインの「客観的な記録」になる方法を、働き方に合わせて選びます。

方法向いている働き方
パソコン・ブラウザ事務所で働く人
スマートフォン(位置情報つき)外回り・直行直帰
ICカード・専用の端末事務所の入口で打刻したい場合
チャット(Slackなど)ふだんの連絡をチャットでしている会社

10人前後なら、1つか2つに絞る 方が、打刻漏れの確認が楽です。

ここまで決まると、システムに求める条件(打刻の方法・今の給与ソフトとつながるか・有給の管理)がそろいます。10人規模での候補の比べ方は 勤怠管理の比較(10人規模) にまとめています。

③ 従業員と有給を登録する

多くの勤怠サービスには、従業員情報と有給の付与をCSVでまとめて取り込む機能があります。ここではマネーフォワード クラウド勤怠の公式ヘルプを例にします。

  1. 従業員を取り込む:「全権管理者メニュー」>「従業員」>「従業員一覧」で「追加」>「インポート」。サンプルのCSVを書き出して、Excelの従業員一覧を写します。苗字・名前・入社年月日・就業ルール・有給休暇起算日などが必須です(従業員情報のインポート方法)
  2. 有給を登録する:「全権管理者メニュー」>「連携」>「インポート」>「休暇付与データ」で、付与日・日数・失効日を取り込みます。取得した分は「有給休暇利用実績データ」で取り込み、付与から利用実績を引いた日数が残日数になります(有給休暇残日数の登録方法)

ほかのサービスにも同じ役割の機能があります(例:ジョブカン勤怠管理の公式ヘルプ 休暇情報の一括登録)。項目の名前は違っても、付与日・日数・失効日・取得した日数 の4つを移す点は同じです。

有給は、年10日以上付与される人に年5日を取らせる義務(労働基準法39条7項)があり、付与日(基準日) がその1年の起点になります。残日数だけを移して付与日を落とすと、次の付与も5日の管理もずれます。

給与ソフトと勤怠をつなぐ予定なら、従業員番号は給与ソフトと同じ書き方にそろえて 登録します。番号が違うと、連携で人を突き合わせられません。

④ 1回の締めだけ並べて動かす

最初の1回の締めは、Excelとシステムの両方で集計し、締めたあとに次を突き合わせます。

突き合わせるもの合わないときに見る所
人数登録漏れ・退職者の残り
総労働時間休憩の設定・所定労働時間
残業・深夜・休日出勤の時間①で書き出した数え方と、システムの設定
有給の取得日数と残日数③で取り込んだ付与日・失効日

並べて動かす期間と切り替える日の選び方(締め日の翌日にする、年末調整や算定基礎届の時期を避ける)は、勤怠管理システムを乗り換えるタイミング に詳しく書いています。

⑤ 切り替えて、古いExcelを保存する

突き合わせが合ったら、締め日の翌日からシステムだけにします。切り替えの前に、従業員へ案内を配ります(下に見本)。そして、Excelの出勤簿は 消さずに、切り替えた日が分かる形で保存 します(次の節)。

従業員に配る案内の見本

そのままコピーして、〔 〕の中を書きかえて使えます。

件名:〔10月1日〕から勤怠の記録のしかたが変わります

〔10月1日〕の出勤から、勤怠は〔サービス名〕で記録します。
Excelの出勤簿への入力は〔9月30日〕の分までです。

・打刻のしかた:出勤したとき・休憩の始めと終わり・退勤したときに、〔パソコン/スマートフォン〕で打刻してください
・ログインの案内:〔8月25日〕までにメールで届きます
・打刻を忘れたとき:その日のうちに〔修正の申請〕をしてください
・有給休暇の申請:〔10月1日〕からは〔サービス名〕で申請してください。今の残日数は移してあります

〔9月1日〕から〔9月30日〕までは、Excelとあわせて両方で記録をお願いします(集計の確認のためです)。
分からないことは〔担当者名〕まで。

古いExcelの出勤簿は、いつまで残すか

勤怠のシステムに移っても、Excelの記録を保存する義務は残ります。厚生労働省の 改正労働基準法等に関するQ&A(令和2年4月1日) と法令で確かめた内容です。

記録根拠保存する期間数え始め
出勤簿・タイムカード等の記録・残業命令書や本人が書いた労働時間の報告書労働基準法109条(その他労働関係に関する重要な書類)5年(経過措置で当分の間は3年)記録の完結の日。ただし給料の支払日の方が遅ければ 支払日
年次有給休暇管理簿(時季・日数・基準日を人ごとに書いたもの)労働基準法施行規則24条の7有給を与えた期間中と、その後5年(当分の間は3年)有給を与えた期間が終わった日。ただし、その有給の賃金の支払日の方が遅ければ 支払日
労働時間の状況の記録労働安全衛生規則52条の7の33年—

Q&Aの例では、給料の計算が毎月1日〜末日、支払日が翌月10日の会社なら、タイムカードなどの記録は 翌月10日から数えて3年 の保存が必要とされています。

一人担当が実際にやることは、これだけで足ります。

  • Excelの出勤簿を、切り替えた月が分かるフォルダ名 で1か所にまとめる(例:「勤怠_Excel時代_2026年9月まで」)
  • 上書きされないように、読み取り専用にするか、別の場所にも1部置く
  • 法律の期間は当分3年ですが、本来の5年に戻っても慌てないように、5年を目安に残しておく のが楽です
  • いずれ勤怠システムを解約するときも同じです。解約の前に、そのシステムの記録を書き出して保存します

つまずきやすい所

つまずき起きること防ぎ方
有給の付与を二重に取り込むマネーフォワード クラウド勤怠では、休暇付与のインポートはすでにある付与を上書きせず、そのまま追加される(公式ヘルプの注意)取り込みは1回にする。やり直すときは、先に登録済みの付与を確かめる
従業員の取り込みで空欄のまま上書きする空欄で取り込むと、登録済みの情報が空欄で上書きされる場合がある(同上)取り込むCSVに、残したい値も全部入れておく
本番を始めてから就業ルールを変える従業員情報から就業ルールを直接書きかえると、まだ勤怠を締めていない過去の日次勤怠にも反映される(同上)①の書き出しと④の突き合わせで、ルールを固めてから本番にする
従業員番号が給与ソフトと違う勤怠から給与へ連携できない番号の桁数・頭の0まで、給与ソフトと同じにする
打刻の方法を増やしすぎる誰がどれで打刻したか分からず、漏れの確認に時間がかかる1〜2つに絞る
自己申告のExcelを、そのまま入力の形だけ変える時刻の取り方が変わらず、ガイドラインの原則に近づかない打刻の時刻が残る方法にする

よくある質問

Excelで勤怠を管理していると法律違反ですか?

Excelを使うこと自体は違反ではありません。ガイドラインが求めているのは、始業・終業の時刻を客観的な記録で確かめることです。タイムカードの時刻をExcelで集計しているなら、Excelは集計の道具です。本人が自分で時刻を書くだけの自己申告なら、説明・実態の調査・上限を設けないなどの措置が要ります。

何人からシステムにすべきですか?

公的な基準はありません。人数より、「自己申告だけで集めていないか」「締めに毎月どれだけ時間がかかっているか」「式を分かるのが自分だけではないか」で決める方が確かです(上の「移る時期の目安」の表)。

古いExcelの出勤簿は、いつ消してよいですか?

出勤簿やタイムカードの記録は、今は3年(本来は5年)の保存が必要です。数え始めは記録の完結の日ですが、給料の支払日の方が遅ければ支払日からです。5年を目安に残しておけば、経過措置が終わっても困りません。

並べて動かすのは何か月ですか?

締め1回分が基本です。1回の締めで人数・総労働時間・残業・有給が合えば切り替えます。合わなければ、もう1回並べます(→ 勤怠管理システムを乗り換えるタイミング)。

まとめ

  • Excelが問題になるのは時刻の取り方。 自己申告だけなら、客観的な記録が残る方法に変える
  • 手順は ルールの書き出し → 打刻の方法 → 従業員と有給の登録 → 1回の締めだけ並べる → 切り替えと保存
  • 有給は 付与日・日数・失効日・取得した日数 の4つを移す
  • 古いExcelの出勤簿は 消さない。今は3年、本来は5年。数え始めは給料の支払日になる場合がある

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